カンボジア・プレアスダッチ地域では、近年、道路の整備が進んでいます。
一方で、その変化によって車や大型車両のスピードが上がり、子どもたちの通学路には新たな危険が生まれています。
実際にこの地域では、交通事故により学校の副校長が亡くなるという悲しい出来事もありました。
「子どもたちの命をどう守るか」。
e-FADとして、改めて向き合わなければならない課題だと感じています。

(写真)カンボジア日本友好学園前の道路。頻繁に大型車両が往来している。
「何かできないか?」から出会った、日本の取り組み
そんな中で私たちがまず思いついたのは、日本・滋賀県発で広く親しまれている交通安全看板「飛び出し坊や」を、カンボジアでも設置できないかというアイデアでした。
さっそく日本から看板を持ち込み、現地での設置に向けて活動を行っています。

(写真)つばさ橋にて。プレアスダッチへ「飛び出し坊や」を運ぶ道中。

(写真)プレアスダッチのe-FAD事務所前で。
そういった活動の中、日本人メンバーが、かつてより交流のあった滋賀県高島市の元市議会議員の方にお話を伺う機会があり、「飛び出し坊や」は単なる注意喚起の看板ではなく、地域の人の手で作られ、長年にわたって地域の安全を支えてきた存在だということを教えていただきました。
その話を聞き、実際にどのような人たちが、どのような思いで制作に関わっているのかを、直接お話を聞いてみたいと考えるようになりました。
そこで、交通安全看板などの制作に取り組んでいる施設としてご紹介いただき、私たちは滋賀県にある生活介護事業所「うらら」を訪問し、現場でお話を伺う機会をいただきました。

(写真)訪問したのは12月5日。前日には初雪が降ったとのことでした。

(写真)自立訓練事業所「かけはし」生活介護事業所「うらら」
滋賀県高島市マキノ町沢

(写真)一般社団法人「このゆびとまれ」代表であり
「かけはし・うらら」施設長の松野さん
うららでは、障がいのある利用者の方々が、
日々の作業の一つとして看板づくりに関わっています。
代表の松野さんは、
「全部を同じようにやってもらうんやなくて、その人ができることをやってもらうんです」
と教えてくださいました。
木材を切る工程、色を塗る工程、仕上げの工程。
作業は分かれていて、
「これならできそうやな」「これはちょっと苦手やな」
そんな話をしながら、それぞれが無理のない形で関わっているそうです。

(写真)工房の様子
完成した看板は、実際に町へ納品・設置されます。
そのとき、地域の方から
「すごいな」「頑張ったな」
と声をかけてもらうことが多いと、松野さんは話してくれました。
「その一言が、利用者さんにとっては一番うれしいんです」
そう言っておられたのが、とても印象に残っています。
自分たちが作ったものが町に立ち、誰かの役に立っていると実感できる。
その経験が自信につながり、「次もやってみよう」という気持ちを生んでいく。
うららでは、そんな循環が自然に生まれていました。

(写真)取り組みについて熱心に説明してくださる松野さん
カンボジアでも、子どもたちと一緒に
当初、私たちは交通安全対策として、
町に注意喚起の看板を設置することを想定していました。
その検討を進める中で、
うららで行われている看板づくりの取り組みを知り、
看板を「立てること」だけでなく、
「どのように作り、誰が関わるか」も含めて考えることの大切さを学びました。
子どもたちが制作に関わることで、
交通安全への意識に加え、
地域との関わりや、日本の取り組みとの交流、文化に触れる機会にもつながっていく。
そうした可能性も含めて、この活動に取り組んでいきたいと考えています。
小さな一歩を、続けていくために
看板づくりは、すぐに大きな成果が見える活動ではありません。
それでも、子どもたちの安全と命を守るために、
地域の中でできることを一つずつ積み重ねていきたいと考えています。
この活動が、子どもたちにとって、
そして地域にとって、未来へつながる一つのかけはしなることを願っています。
e-FAD編集部